ウクライナ情勢を考える―現状のまとめ

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関係国の現状

ロシア

BBC Newsで衛星写真付きで報道されているように、多数のロシア軍がウクライナを取り囲むように配置され、現在も増強され続けている。国境への軍事力増強の動きは一年以上前から始まっているけれど、過去数か月で加速している。

Putin大統領は、ウクライナに対する侵略の意図は繰り返し否定する一方で、東欧からの撤収を含むNATOの巻き戻しや、ウクライナがNATOに加盟しないことの確約・法的措置などをレッドラインとして、このレッドラインが認められない限り、強硬な措置を取らざるを得ない、とのメッセージを繰り返し送っている。

2014年にクリミア併合をしたほか、東部のドネツクとルガンスクに対して影響力を強め、親ロシア武装勢力への支援、住民へのロシア国籍の付与など、もろもろの政策を通じて影響力を強化してきている。

アメリカ

アメリカは、たとえばこちらのCBSニュースで報じられているように、

President Biden said Friday that the U.S. has reason to believe that Russian President Vladimir Putin has made the decision to invade Ukraine. ”As of this moment, I’m convinced he’s made the decision,” the president told reporters at the White House. “We have reason to believe that.”

と、バイデン大統領、ブリンケン国務長官が過去数週間にわたってロシアがウクライナに侵攻すると警告を繰り返している。これは西側諸国に警戒を促すと共に、ロシアに対する牽制を意図していると言えそうだ。

アメリカに滞在する米国人に対して、「侵攻が行われた際には軍事的な救出作戦を行う予定はない。」とした上で、民間航空機等を利用しての退避勧告を出したほか、大使館の要員も避難させるなどの措置をとっている。

実際に侵攻が行われた場合、アメリカの軍隊がウクライナで戦う可能性については、ウクライナがNATO加盟国でないことなどを指摘しながら早期の段階で明確に排除している一方で、侵攻時には強力な経済制裁を示唆するほか、西側諸国の結束に努めるなど、牽制をしている。また、NATOに加盟している東欧などへの派兵を決定するなど、実際に侵攻が行われた際の影響の封じ込めを意図した動きも強めている。

過去のアフガニスタンなどの経験などもあって厭戦気分が強いアメリカ国民の間では、こうした非軍事的措置を中心とした対応については共和党・民主党支持者を問わず、現時点では賛成の声が大きい。

ウクライナ

ウクライナは当事者であるが、2014年にクリミア半島を強制的に奪われ、東部2州の一定領域についても施政権を失うなど、ロシアからの強い圧力の中でとることのできる手は限られている中で、西側諸国に武器などの直接的な軍事支援を求めている。

なおロシアの人口は約1億4400万人に対して、ウクライナの人口は約4400万人。参考までに隣国のポーランドの人口は約3800万人である。

ウクライナは20万人規模の正規軍を持ち、今回の危機においては、女性の徴兵事務所への登録などを含む国家総動員体制をとりつつあるが、ロシア軍が侵攻を始めれば持ちこたえるのは極めて難しいといわれている。

ドイツ、フランスなど

ヨーロッパにおける西側諸国は、より直接的にロシアの脅威を感じる一方で、パイプラインを通じた天然ガスの供給をロシアに頼っていることで、ロシアに対する強硬な立場をとりにくい。ロシアとドイツを結ぶNord Storm 2 パイプラインについても、侵攻が起きればアメリカが主導する経済制裁の対象に含まれることが予想され、稼働できなくなる可能性が高まる。

ドイツは天然ガスのみならず、石油・石炭も大きく依存しているため事態は深刻だが、原子力発電の停止を推し進める一方で、石炭発電を環境保護の観点で抑制する政策をとったことで、発電のための天然ガスの重要性がましているという背景がある。

このため、ウクライナの東部二州の停戦協定であるミンスク合意の完全履行などを含む、外交的措置での事態安定化を目指している。こうした立場は、アメリカとロシアの仲介者として外交的な解決を可能にする可能性を高める一方で、ロシアに西側の足並みの乱れとして捉えられる余地を残す。

 BAFA showed that 34% of Germany’s crude oil came from Russia in Jan-Oct. 2021 and coal group VDKi said 53% of hard coal received by German power generators and steelmakers came from Russia last year.

Factbox: How much does Germany need Russian gas?, (Reuters News 2020/2/20)

決定的な衝突をさけたい立場からは、

問題の核心

ロシアの視点

アメリカの中道的なシンクタンクである戦略問題研究所(CSIS)に詳細な記事から引用すると、「ロシア首脳部の一番の目的は、ベラルーシ、ウクライナ、グルジアは、モスクワが支配する軍事同盟・経済ブロック以外には参加せず、外交・安全保障政策に関してはロシアの意向に従う保証。」である。

The Kremlin’s primary goal is a guarantee that Belarus, Ukraine, and Georgia will never belong to a military or economic bloc other than the ones Moscow controls and that Russia will be the ultimate arbitrator of the foreign and security policy of all three states.

Russia’s Possible Invasion of Ukraine (CSIS, 1/13/2022)

核心は、ソビエト連邦の崩壊後30年がたつ今、旧構成国が主権を持つ自由な国としてふるまうことが許されうのか、あるいはモスクワの実質的な統治を受け入れなければいけないのかでえある。

In essence, this conflict is about whether 30 years after the demise of the Soviet Union, its former ethnic republics can live as independent, sovereign states or if they still must acknowledge Moscow as their de facto sovereign.

Russia’s Possible Invasion of Ukraine (CSIS, 1/13/2022)

表向きは、こうした要求はロシアの安全保障上の問題であり、クレムリンはNATOの東方への拡大こそがソビエト後の国際関係における問題の原点であり、西側諸国はこの問題を修正しなければいけないと主張する。

Ostensibly, the demand for an exclusive sphere of influence in Eastern Europe and the south Caucasus is to meet Russian security interests. The Kremlin has portrayed NATO expansion to the east as the original sin of post-Soviet international relations with the West that now must be rectifid.

Russia’s Possible Invasion of Ukraine (CSIS, 1/13/2022)

ただし、この要約は、Putinの発言などをもとにしつつも「西側が考えるロシアの意図」であることには留意する必要がある。

アメリカの視点

各国はそれぞれ主権を持つし、NATOの”Open Door Policy”は曲げることができない。正義はアメリカ側にあり、ロシアは軍事力などで現在の秩序を変更しようとする、国際秩序に対する挑戦者である。従ってロシアの要求や試みを受け入れることができない。

ロシアはソビエト崩壊以降もアメリカにとって最大の軍事的脅威であり、封じ込めが必要である。

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