大戦略(Grand Strategy)とは何か

戦略という言葉は、なんとなく格好がよいのか、よく使われるけれど、一言で説明してみて、と言われると困ってしまう言葉ではないだろうか。もともとが軍事用語からきていて馴染みが無いからかもしれないし、本来意味するものは抽象的な要素、あるいはマクロ的な要素が強く、意識をしなければ、我々の日常の思考プロセスには出てきにくいものだからかもしれない。

普遍性がありながら、ぴったりとあてはまる説明はないだろうかと思っていたところで、なるほどと思った定義はこちら。

大戦略とは「無限になりうる願望と必ず有限の能力とを釣り合わせる」こと。( Gaddis, John Lewis )

願望は、理想と言い換えても良い。同書から、引用を重ねれば、

マキアヴェリが犯した最大の罪は、誰もが知っているが誰も認めたがらないこと、すなわち理想というものは「実現不可能だ」とはっきり示したことにある

現実はつねに理想には届かないのだとアウグスティヌスは教えた。理想をめざして努力することはできるけれども、理想を実現できると期待してはいけない。

とあるように、限界があることを認識することが、戦略的思考の第一歩と言える。目指す方向を示す指針としての理想は大事だけれど、「〜であるべき。〜でなければならない。」といった思いだけでは上手くいかず、現実を認識することが必要不可欠だ。

現実を認識する上では、善悪・好悪などの主観を廃し、事実をあるがままに認知することが求められる。このためにはデータなど客観的な資料に基づくことと、バイアスのかかったフィルターで情報を取捨選択しないことが求められる。「ファクトフルネス」は認知バイアスの影響力とデータに依ることの重要性を教えてくれる。

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